★草刈機使用で失明の危険★

消費者被害警戒情報(危害情報システムから) No.6

 草刈機(*)が広く使われるようになった。今や、草刈機は、農作業、林業、造 園など業務用だけでなく、一般消費者にも使用されており、農機具店の他、ホーム・センターなどでも広く販売され、草刈機の国内向け年間出荷台数は約60万台ともいわれている。

 草刈機の普及とともに、それによる事故も増えている。国民生活センター危害情報システムには、草刈機を使用していてけがをした事故情報が5年足らずの間に73件寄せられている。石や金属等硬い物に高速回転している草刈機の刃(以下「刈刃」という)が当たって破損した刈刃の破片や石、金属片等の飛散物が目に飛び込んで失明に至った重症事故もある。

 そこで、国民生活センターでは、同種の事故の防止のために関係機関に安全対策を要望するとともに消費者に注意を呼びかけることとした。

 (*)「草刈機」又は「刈払機」と呼ばれているが、以下「草刈機」という。



消費者被害警戒情報(危害情報システムから) No.6

 草刈機(*)が広く使われるようになった。今や、草刈機は、農作業、林業、造 園など業務用だけでなく、一般消費者にも使用されており、農機具店の他、ホーム・センターなどでも広く販売され、草刈機の国内向け年間出荷台数は約60万台ともいわれている。

 草刈機の普及とともに、それによる事故も増えている。国民生活センター危害情報システムには、草刈機を使用していてけがをした事故情報が5年足らずの間に73件寄せられている。石や金属等硬い物に高速回転している草刈機の刃(以下「刈刃」という)が当たって破損した刈刃の破片や石、金属片等の飛散物が目に飛び込んで失明に至った重症事故もある。

 そこで、国民生活センターでは、同種の事故の防止のために関係機関に安全対策を要望するとともに消費者に注意を呼びかけることとした。

 (*)「草刈機」又は「刈払機」と呼ばれているが、以下「草刈機」という。



草刈機とは

 草刈機は、主に雑草刈、山林の下刈等に使用する商品である。一般に、ガソリンと2サイクルエンジンオイルの混合燃料を使用するエンジン式は『草刈機』又は『刈払機』、交流100Vを使用するモータ式は『草刈機』と呼ばれている。




事故の概要

事故の概要

 ● 草刈機による事故の内容
 危害情報システムで収集した草刈機を使用中けがをした事故は、1992年4月から1997年1月までに73件(協力病院から69件、消費生活センターから4件)ある。年度別にみると、92年度3件、93年度8件、94年度22件、95年度19件、96年度 (97年1月まで)21件報告されている。このうち、草刈機を使用中飛散した刈刃の破片、金属片、石等の飛散物の事故は13件あった。

1.60才代・男性が多い
草刈機事故の性別件数の内訳は、男性63件(86.3%)、女性10件(13.7%)であった。年代別件数では、60才代31件、50才代18件、40才代15件の順に多く、10才未満も2件あった。
2.切傷、目の障害が多い
けがの内容は、切傷(38件)、目の障害(9件)、擦過傷・挫傷・打撲傷、骨折、切断(各6件)の順に多く、これらで89%を占めた。
3.飛散物による事故は13件
刈刃の破片、金属片、石等の飛散物による事故は、男性11件、女性2件、合計13件だった。年代別では、50才代、60才代がそれぞれ5件、40才代2件、30才代1件であった。
4.飛散物の事故では目の障害が多い
 飛散物の事故のうち9件は目の障害、4件は大腿・下腿・足部のけがであった。
また、目の障害のうち、6件は刈刃の破片や金属片A3件は石が目に入った事故であった。



草刈機による目の外傷事故内容

草刈機による目の外傷症例を数多く扱っている独協医科大学病院から国民生活センターが別途収集した情報によると、同病院に過去18年間(1979年1月~1996年12月)に入院した草刈機による目の外傷は64症例であり、いずれも刈刃の破片等の飛散物が目に侵入した事故であった。

1.40才代~60才代・男性が多い
性別件数では、男性が58件(91%)、女性が6件(9%)であった。年代別件数では、50才代17件、40才代16件、60才代14件の順に多く、40才代~60才代で73.4%を占めた。
2.5~9月が全体の84%を占める
事故が発生しやすい時期は、草の伸びる草刈りのシーズン5~9月が全体の84%を占めて、7~8月は特に多かった。
3.飛散物の位置は硝子体(しょうしたい)内が多い
41症例は、刈刃の破片や金属片等が目内から摘出されているが、このうち26症例(63.4%)は、目の奥に位置する硝子体まで達していた。
4.受傷者の4分の1は失明
手術等の処置を受けても、視力が0.02以下(社会的失明)までしか回復しなかった症例は16件で、受傷者の4分の1を占めており失明率は25%であった。
最終視力(%)
失明 / 25%
0.1以下 / 6%
0.2~0.5 / 22%
0.6~0.9 / 19%
1.0以上 / 28%



危害情報システムで収集した目の外傷事故事例(略)

調査結果

国民生活センターのテスト結果

エンジン式(排気量25.4cc)の草刈機に、最寄りのホームセンターで入手できたチップソー刃(3種類)、のこ刃(2種類)、8枚刃(2種類)を取り付け、コンクリートブロックに衝突させて刈刃の欠損状態を調べた。その結果、チップソー刃(1種類)で8,000回転と11,000回転いずれの場合も欠損が認められた。その他のチップソー刃、のこ刃、8枚刃に欠損は認められなかった。その他、衝突の際に刈刃から生じたと思われる金属粉のほかにも鉄分を含むと考えられる小さなコンクリート片、コンクリート粉末も飛散していた。
以上のことから、高速回転のチップソー等の刈刃が石や金属等硬い物に当たると刈刃が破損して周囲に破片が飛散することが確認された。刈刃の破片が目に入ると、場合によっては目に重大な危害を及ぼすことが予想された。また、欠損した金属片だけでなく、被衝突物の破片やより粒子の細かな金属片や石なども飛散することがわかった。これらも目に入れば危害を及ぼす可能性があることがわかった。

注意表示

草刈機のメーカー、刈刃のメーカーで、刈刃の破片、飛石等による事故に対する警告表示の内容・用語等が不揃いでわかりにくい。

草刈機等に関する安全基準

草刈機は農業機械に関する安全装備の鑑定基準の対象となっており、安全鑑定を受けた商品にはシールが貼られるようになっている。ただし、安全鑑定を受けるかどうかは強制でなく任意である。なお、草刈機本体については、安全鑑定に定める一般的安全基準以外、業界で定めた安全基準は無い。
のこ刃、切込刃(4枚刃、8枚刃、12枚刃)の刈刃については、JIS規格(草刈機用回転刃 JIS B9212)で定めているが、最近多数販売されているチツプソー刃等その他の刈刃についてはJIS規格が無い。

眼科専門医からの情報

眼科専門医によると、高速で回転する刃が、石等に当たって刈刃の破片や金属片等が飛び、目に当たると目の奥まで到達し、目の組織を破壊し視力を奪い、視力の回復が難しくなる可能性が高くなり失明に至るとのこと。
症状としては、目の表面(角膜の表面)の傷のときは目にゴミが入ったときのようにゴロゴロした痛みを伴なうが、むしろ軽症の場合が多い。一方、角膜を突き抜けたときは、よほどひどい傷の場合は即見えなくなるが、痛みを伴なわなかったり、痛みが少ないことがある。また、角膜より奥に小さい金属が入った状態で、痛みを伴なわないため気付かずに放置しておくと、半年から1年位経過してから「鉄錆症」(目に入った鉄片に錆が発生して、目内に錆が沈着した状態)に至り手術しても視力回復が困難になることが多い。




草刈機事故の問題点

1.刈刃の破片や石等の飛散が目の中に入って、失明等重篤な事故が発生している。
2.事故発生時に痛みを伴なわなくても重症事故になるケースが多い。
3.保護メガネは、刈刃の破片や飛石等による目の外傷事故対策に効果的であるが、草刈機と別に販売されているため、保護メガネを使用しないで事故が発生している。
4.保護メガネを持っていても、面倒だったり、炎天下で使うと暑苦しいので使用しなかったりして事故が起きている。
5.飛散防護カバーと刈刃との間に草が絡まって邪魔だったり、カバーを取り付けると草を刈っている部分が見えにくいため、飛散防護カバーを取り外して使用して事故が発生している。
6.飛散防護カバーを付けていても事故が発生しており、飛散防護カバーは、飛散物による事故防止対策として十分とはいえない。
7.周囲にも飛散しているので、操作している人以外の人にも危害が及ぶ恐れがある。
8.草刈機のメーカー、刈刃のメーカーで、刈刃の破片、飛石等による事故に対する警告表示の内容・用語等が不揃いでわかりにくい。
9.草刈機本体については、安全鑑定に定める一般的安全基準以外、業界で定めた安全基準は無い。
10.のこ刃、切込刃等刈刃のJIS規格は有るが、最近多数販売されているチップソー刃等刈刃のJIS規格は無い。
11.危険ゾーンについて、草刈機の取扱説明書では、国際規格から業界の申し合わせで「作業者を中心に半径15メートル」となっているが、林業労災防止協会が定めた安全作業指針では「作業者を中心に半径5メートル」とあり、危険ゾーンについての考え方に違いがみられる。
刈刃の取扱説明書でも、危険ゾーンについて「半径15メートル」や「半径5メートル」の表示がみられる。



草刈機事故防止のための消費者へのアドバイス

1.購入時の留意点
•草刈機は、安全鑑定を受けたシールの貼ってある商品を選ぶこと。
•刈刃は、JIS規格のあるのこ刃、切込刃についてはJISマーク入りの刈刃を目安にすること。JIS規格の無い刈刃もあるので、その場合は草刈機の取扱説明書に記載してある刈刃を選ぶことが望ましい。
2.作業前の留意点
1.作業前に必ず点検する
•刈刃の飛散防護カバーの装着
•ネジの締め付けの点検
2.作業時に保護具を着用する
飛散物による事故防止のために、顔面の保護具、保護メガネその他身体を保護する長袖の作業着、作業靴などの保護具を身につけること。
3.作業時の留意点
•取扱説明書をよく読んでから使用すること。
•危険ゾーンに他の人を近付けないこと。
•作業場所の状態を確認し、杭などの作業上の危険物がないか調べておくこと。
•長時間使用時は、給油と点検を兼ねて休息し、疲労を防ぐこと。
4.目に飛散物が入ったときにどうすればよいか
 草刈機を使用していて「目の中に何か入ったかな?」と思う程度でも、目をこすったりしないですぐに眼科の診断を受けること。



行政、業界等への要望事項

1.草刈機メーカーと刈刃メーカーで、用語・注意表示の内容等が不揃いのためわかりにくいので、用語等を統一して消費者に対する危険性の周知徹底を図ること。
2.保護メガネを着用しないと失明等の事故の恐れがあることを明示して、草刈機を販売するときも保護メガネの着用を促すこと。
3.より安全な商品の研究開発に取り組むこと。
4.最近多数販売されているチップソー刃等の刈刃の安全規格を検討すること。
5.草刈機本体の安全基準を検討する事





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